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日本を代表する建築家竹山聖氏の自叙伝を含めたエッセイです。
氏は大学卒業とともに、就職という通常の過程を経ずに仲間と共に設計事務所を立ち上げました。
その名は「アモルフ」。規則性を持たない不定形という意味のようです。
生き方もその作品もその名の通りです。

通常のレールの上を走るのではなく自分たちの設計理念のもと、その設計活動に全てを賭け、未来への希望に漲っての門出だったと思います。 
開設当初は知人の紹介で設計しながら執筆活動で凌いでいたとあります。
その後バブル経済という転機が訪れました。不動産を扱うディベロッパーの仕事です。
 ディベロッパーの数字を追うだけの銭勘定の仕事にも関わらず、アモルフは常にそれまでに培った設計理念、建築に対する真摯な姿勢で臨み、そのことはやがて ディベロッパーからの信頼を勝ち取り次々と作品を世に送り出しました。そして、その都度新たな出会いがあり、それがまた次へのステップとなり、35歳という人生の節目の年(村上春樹著:プーサイド)から京大に招かれ教鞭をとりはじめ、アモルフの設計活動とともに現在に至ります。

追想で初めて公共建築に携わった時のことがありました。氏の母校の設計依頼にかつてない喜びと興奮を覚えたとあります。民間事業とは異なる営利を目的としない事業の設計は魅力的でこの上ない喜びを感じたと思います。私は地方のしがない設計士ですが今回初めてあるお寺の「書院・庫裡」の設計を設計競技の末、受注することができました。公共の仕事ではありませんが檀家さんをはじめ不特定多数の多勢の人達が集まり利用する施設の設計は、私にとってはかけがえのない貴重な経験であり気持ちの上でも充実した面持ちで現在取り組んでいます。

本の中で一貫して「人との出会い」を論じています。
恩師をはじめ、友人、知人、クライアント、異職種の人達、etc・・・。
数多くの出会いがあり、影響を受け、助けてもらい、それらが全て財産となり現在があることに感謝の気持ちが絶えません。
「出会いが人を造り、人生を変える。」そんな思いがあります。

  建築は別世界を作りあげる作業
  建築は夢を売る仕事

そんな氏の言葉を胸に、もう一踏ん張りしようと思います。



nobu