青木設計事務所の建築ブログ

静岡を拠点に活動する青木設計事務所のブログです。 家づくりをしながら考えていることや実家の井川のことなど 日々を綴ります。

2011年05月

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「徹」 設計:藤森照信


清春芸術村の広場の隅っこに、小さくてかわいらしい、まるで自分の手の中におさまる宝石のようのような建物があります。藤森照信さん設計の小さな茶室「徹」です。

思わず自分もほしい!と思ってしまうくらい、子供心をくすぐられました。


藤森さんの何がすごいって、好きなものをおもいっきり楽しんでつくっているのに、ちゃんと美しい建築になっているところ。
そして建築界以外の多くの人の心をとらえて離さないところです。


人の手でしか生み出せなそうにないこの優しい建築は、例のごとく縄文建築団の手によって仕上げられたようです(縄文建築団とは藤森さんをはじめとする素人だけの施工集団です)。


正直、憧れます、縄文建築団。

同じ志のもと、一声で集まり合える仲間がいるってすごいことですよね!

建築の場合、共同作業で成し遂げるからこそ、その意味が増すと思うんです。

藤森さんは今の建築界が忘れかけている、自分たちでつくることの喜びや建築の楽しさを身を以て発信し続けてくれています。

自分も影響された一人で、「加藤先生の家」では塗装工事やタイル工事など、仕上げに関わる部分の施工はなるべく自分たちの手で行いました。これからは影響されるだけではなく、自分たちなりのスタイルを確立していきたいものです。



清春芸術村にある「徹」は、普段は中に入れず一つのオブジェのような位置付けです。

でもこのワクワクする建築の存在が、芸術村全体の世界観を作り出している気がしました。





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光の美術館 クラーベギャラリー(設計:安藤忠雄)
 

安藤忠雄氏の代名詞でもあるコンクリート打放造りの建築です。
しかも、自然光だけで作品を鑑賞する世界で唯一の美術館です。
クラーベは、巨匠ピカソに認められ世界の画壇に躍り出た画家で、ここ清春のラ・リューシュにも滞在したことがあり、それが縁で、クラーベから寄贈された大作が展示されています。



この美術館は、決して大きい建物ではありませんが、建築の教本になるような手法が随所にちりばめられた建築です。

打ち放し型枠の目地から見ると、間口
3間×奥行き8.5間×高さ4.5間の寸法のキュービックな建築。
出隅コーナーの
1カ所がテーパー状に斜めにカットしてあります。
日本で流通する規格寸法を無駄無く上手に使うことは、大切なことです。
さすがに仕上がりがきれいです。

このテーパーのカット部分には、トップライトのガラスはめ込まれてあります。
コンクリート壁の小口が斜めに大きく見えてしまい、意図しているシャープでスッキリした感じとは裏腹に、おおぼったい感じが拭えません。外部からの見えかたとして、
RC壁の小口を鋭角の頂点だけが見えるようにカットすれば、もっとシャープで、頂点の垂直線だけが見えるようになったのではと思うのですが・・?この部分は、内観でも決して美しい納まりではなかったのが残念です。


 

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コンクリートの庇を通りエントランスに入ると、正面にステンレスのカウンターがあります。
天井高
2400の受付を通り右に曲がると、天井高7.2mの展示ホールに抜け出ます。入口は低く低く、そして、奥へは高く高く、広く広くの手法です。建物の構成は、四角形平面を対角線に切り取り、半分を2階展示ホール、残り半分を吹き抜けの計画です。
ホールに躍り出た途端に天窓よりふりそそぐ光が、コンクリートで統一した床・壁・天井の無機質な空間を、天候や時間の変化とともに抽象的に映し出します。来訪者は別世界に迷い込んだ時のような、高揚した気持ちで館内を巡ります。展示物に目を配ることも忘れそうなくらい身が引き締まる感覚です。


コルビジェが
初期の計画案で小さな四角形の住宅を設計していた時の話があります。
の小さな空間でもっとも大きな寸法が何かを探していて、それが対角線であることを発見したとの記述を思い出しました。
対角線は、広がりと収束を同時に合わせ持つ特異な区分線です。

普段、建築を計画するうえで忘れかけていた線だったので、今回のことで改めて着目することができ、少し視野が広がった気がしました。



最後にトイレに入りました。
芸術的というべきかアートというべきか、
静寂で神秘的な空間でした。

 
 
 

 

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梅原龍三郎氏のアトリエ(設計:吉田五十八) 外観

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梅原龍三郎氏のアトリエ
(設計:吉田五十八) 内観




ゴールデンウイークを利用しての建築探訪です。
曇りがちな天気でしたが、交通もさほど渋滞もなくドライブ日和の良い一日でした。

 


清春芸術村は、北杜市の郊外で少し山を登った丘の上に位置しています。
最初に目に飛び込んでくるのは、赤煉瓦造りで円形状の多角形の建物です。
これは、「ラ・ルーシュ」という名前の
パリにあるアトリエを模して再現されたものです。
一見ドーム型の教会を思わせるものですが、
アーティストたちの創作の場としての貸し出しアトリエとのことでした。


この芸術村には、日本の近代建築を牽引してきた、
著名な建築家達の設計による建物が棟を連ねています。


設計に携わる者にとっては、楽しい一日が過ごせる場所でもあり、
それらを感想を交えて紹介していきたいと思います。

 


 

梅原龍三郎氏のアトリエ


吉田五十八の建築を目にするのは、初めての経験です。
画家のアトリエで木造平屋の小さな建物です。

玄関ポーチに向かって歩いて行くと、
母屋の切妻屋根にそっと寄り添う下屋の片流れ屋根が、
私達を静かに迎え入れてくれます。

内覧ができなかったので窓越にみる程度だったことが残念でしたが、
外観の質素さに比べて内部のおおらかさは、
ガラスの窓越からも十分伝わってきます。


日本の住宅に下がり壁を設けず、
床から天井いっぱいまで建具で間仕切る手法を取り入れたのは、
吉田五十八が最初だと記憶しています。
それと今では一般的で誰もがつかう、
障子やふすまを壁の中に引込んでしまう手法も、
吉田五十八が最初だったと思います。

もちろんこの建物でもはっきりと見てとれました。
玄関から見える奥のアトリエの建具(ふすま)がそうです。
天井面ですっきりとアトリエのボリュ—ムのある空間が切り取られているため、
玄関に立つと吸い込まれていくような感覚が伝わってくるようです。
ふすまもきっちり壁の中に収まっています。



これがまさしく、「吉田和風」なるものと感じ入りました。



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バイオリン、ピアノ、フルート、リコーダー四重奏の音楽会

「東日本大震災義援金としてのチャリティーコンサート」に行きました。
企画は静岡で音楽教室を開く先生とその仲間達。
プロの生演奏と、未熟ながら教室の子供たちの演奏もあり、
それぞれの思いは違っても、
場をひとつにする音楽の魅力とライブの醍醐味を、
久しぶりに感じました。

建築もしかり、
写真から発するものには限界があります。
やはり、現場にて
「光・音・触感」等に五感を働かせ、
素直に感じるものに、設計活動に活かせる手がかりがあるはずです。
もっと建築に接しなくてはなりません。

しかしながら、
音楽家たちの意欲的なチャリティーコンサートに接し、
私の建築士としての活動も問われているようで、
災害時だけではなく、日常のボランティア活動に、
もっと意欲的でなくてはならないと、考えさせられました。


写真は、知人の清水貢年さんのポストカードです。

コンサートの案内といっしょに配られたものです。
清水さんの旅の写真画像も、 
音楽会といっしょにバックスクリーンに放映されました。

彼の写真には必ずと言っていいほど、
旅先で出会った子供たちの愛らしい姿があります。
彼のあたたかさとやさしさを感じます。


nobu




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