森山邸とは…東京下町の路地裏に建つ10コのボリュームを持つ住宅。
設計は今年プリツカー賞を受賞した西沢立衛氏。
この住宅は、僕が学部の卒論を書いていた時期に竣工を迎えた。
当時、仲間の間で熱く語り合った建築であり、建築界全体でも近年もっとも論議された住宅の一つであることは間違いない。
まぎれもなく傑作。
あれから4年くらいの月日が経ち、ようやく今回この建築を実際に見ることができました。
スケール感は思ってた通りの心地よい小ささで、この場所における最適のスケール感なんじゃないかとさえ思った。
これは経験とスタディの賜物だなぁと。
住宅なので、見学自体は外から眺めることしかできなかったけど、透明性の高い10個の箱の隙間をグルグル歩いていると、内部空間まで疑似体験しているような錯覚も覚える。これはすごいことだと思う。内部と外部は、ほぼ等価に関係し、その周辺を含んだ全体の環境が森山邸という建築なのだなと感じられた。
その反面、下町の中に現れる記号的な四角い箱と「白」という色の持つ周辺への影響力の大きさ、強さを感じた。
また、薄さ、軽さ、近さの追求からこの構造や表現となっているのだろうけど、木とか土とか石など、自然材料を使ったらどうだったのだろうかとか、システムに縛られすぎてないかとか、思うこともあり…
それでも、この建築は素敵だし、住んでみたいし、得体の知れない「優しさ」や「懐かしさ」みたいなものを感じることはできたのだけれど…
森山邸を見学しながら、大学4年当時の自分と、今の自分の視点の違いを感じていた。
僕は大学4年の頃にようやく建築に目覚め、当時いろんな本を読んで、がむしゃらに設計に取り組んでいた。ただ人より面白く、より新しくと考えていたあの頃とは違い、今は自分の好みや個性を含めた方向性が少しだけ見えてきているように感じる。
来年は論文を書いてみようと思う。
青木設計事務所の目指していく建築について、活字にすること。
これが今の僕たちに一番必要なことだと思う。
今年も、もう終わります。
2011年はどんな人と出会い、どんな建築が生まれるのでしょうか。
楽しみです。
以上、本年はありがとうございました。
2010.12.31 Ryosuke
コメント