伊東豊雄著「美しい建築に人は集まる」を読みました。
県立図書館で見つけて、その日のうちに一気読みしました。
設計事務所を始められて50年の伊東豊雄さん。
一昨年には脳梗塞を経験されたとのこと。知らなかった、、
本書の中では、これまでのご自身の人生や、過去生み出した建築について振り返られており、更にこれからの建築についても語ってくれています。
先日もこのブログに書いたように、伊東さんの建物や建築概念に影響を受けた世代の僕としては、胸が熱くなる内容でした。
本著の中で伊東さんは、「今、どういう建築をつくりたいか?」と問われたら、「美しい建築をつくりたい、それに尽きる」と断言されていました。
「いつからか、建築が美しいとか、あれは美しい建築だと言うようなことを、人はあまり言わなくなった。コンセプトと言う言葉で、建築を語るようになった。それは、都市の理屈で建築を考えているからではないかと思います。」とのこと。
さらに
「今の若い人たちはシェアスペースの仕組みづくりや空き家の改修等のプログラムにポジティブで、それらは家族のあり方やプライバシーの概念を変え、社会をラディカルに変えていくのかもしれない。しかし、美しいものをつくろうと言う気はないように思う、むしろ美に関しては無関心、もしくは諦めている。僕は美にこだわりたい」とのこと。
この言葉はとても響きました。
コンセプトに沿って建築をつくることが目的自体になってはもちろんダメだし、概念や環境をデザインすることに比重を置いてしまって、建築の一番の魅力である実態ある大きな物質の‘美’をないがしろにしてしまってはいけない。
理屈はもちろん大事だけど、もっと、場として、環境として、存在として、美しいものを目指す視点を大きく持つべきだな、と改めて考えさせられました。
「美しい建築に人は集まる」とは、建築の真髄だと思います。
一方で、これからの建築についてはこう述べられています。
「これからの建築は、人と自然と建築との関係を、もう一回どう組み直すか」である、と。
東日本大震災の復興や、大三島でのライフワークを経ての言葉には重みがありますね。
伊東さんの言う美しい建築の一つは、五感に訴えかける「内なる自然」を持った建築のこと。
先日僕らも体験した「ぎふメディアコスモス」は、それが実現できている手応えのある作品の一つと紹介されていたので、やっぱりそうなんだ!と思って嬉しくなりました。内なる世界観を持った建築の構成とディテールは美しく、さらに木や布を使った素材選びやサイン・装飾のデザインにぬくもりが感じられて、大きな建築なのに近くに感じれらて、優しかったのです。これが現時点での一つの答えか、と思いました。
巨匠であっても、時代とともに日々変化し、理想を追い求めている姿はとてもかっこいいです。
本著は、御年80歳の巨匠建築家の人間的な部分、建築の根源的な部分が垣間見える本です。
興味のある方はぜひ^ - ^
良介
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