青木設計事務所の建築ブログ

静岡を拠点に活動する青木設計事務所のブログです。 家づくりをしながら考えていることや実家の井川のことなど 日々を綴ります。

2020年12月

この1年コロナに始まり世界中を席まきしながら終わることなく、その勢いは来年へと続くようです。
生活様式も変わりました。自分だけ良ければ良いという考えは、
今後はこれまで以上にブーメランのように自分自信に跳ね返ってることになると思います。
協調という言葉が大事な時代となることでしょう。
来年は明るい光が射すことを願います。

今年は例年以上に仕事を追われ、職を失い困窮している人たちが増えています。
私の事務所も延期や中止になった案件を抱え、少なからずその影響を受けました。
それでも私達にとっては朗報もありました。以前このブログでもお話ししたように
「明王寺:書院・庫裡再建計画」に携わることができたことです。

明王寺は、臨済宗妙心寺派のお寺で数百年の歴史のあるお寺です。
この「お寺」という公共性のある建築に携わることは私達にとっては初めてのことで、
設計競技を経て私達が指名されたことは、大きな自信ともなりました。

コロナ禍により「協調性」がより重要視されるなかで、
「お寺の書院・庫裡」の建築に携わることが出来ることに、深く喜びを感じています。 

今年の最後のブログとして、
「明王寺:書院・庫裡再建計画」について紹介したいと思います。
私たちの提案は「開かれた明王寺」をテーマにしたものでした。
子供から大人、お年寄りも気軽に訪れ、参拝して
「地域コミュニティの集いの場」となることのできるお寺を目指しました。
またお寺は広い境内を持つことで、今後災害時の防災拠点施設にもなりうる場所とも言えます。
それらのことを考えての提案としました。

計画案全体の模型俯瞰図です。
左手の不動堂と本堂は既存のものです。右手前の平家部分が新たな書院、その奥の2階建物が庫裡です。
明王寺俯瞰正面のコピー
アプローチのスケッチです。
開放された境内の庭に対して大きなウッドデッキを設けました。
参拝者、訪問者が気軽に休めるベンチ、デッキになればと思います。
明王寺アプローチのコピー2

玄関のスケッチです。
正面は控え室、右手奥が本堂への通用口となります。
本堂との段差を解消するために車椅子用昇降機を備える予定です。
明王寺玄関修正3のコピー

客間のスケッチです。
広間・デッキ・庭へとひと繋がりの広々とした空間となります。
旧明王寺客間1−2のコピー

現在、計画案の検討修正をしながら設計を進めています。
木造建築の王道とも言える質素な切妻屋根の佇まいとし、その内部は木造軸組構造を素直に表現したいと考えています。
完成予定は、令和4年の初旬です。
今後、計画案・工事の進捗状況を少しずつ紹介していきたいと思います。


新しい年に向けて、私たちが出来ることに精一杯取り組んでまいりたいと思います。
今後とも、青木設計事務所をどうぞよろしくお願い申しあげます。




                                 青木信浩 青木良介









 

現在工事中の「長沼の家」を紹介します。

 1階土間リビングの画像です。
 北東の出隅コーナーに向け可能な限り開口部を設けてあります。
R0004883
 3階リビングです。
R0004897
片流れの屋根と対角線状に45°に振られた切妻屋根を組み合わせた軸組構造を、
そのまま内部に表現しました。
ここでも屋根形状に沿って間口一杯に開口部を設けてあります。
遠く北東の奥には富士の山を望みます。 その左側北方向には南アルプス連峰、手前に谷津山、
奥に浅間山の緑、そして静岡市街へと続き視界がパノラマ状に開いていきます。
意図した以上の視線の広がりを生み出すことができました。
屋根下空間にスッポリと包み込まれたような感覚を覚えます。

 屋上テラスから富士の山を眺望。
 軒先が空を切り取り、3階建てならではのちょっとした贅沢な展望台と言えます。
IMG_1106

1階の土間リビング、3階リビング 、屋上テラス。
それぞれ開口部・屋根形状と建物により切り取られた周辺景観を望むことができ、
設計時に考えていた以上の空間体験を創り出せそうです。
それもこれも、建築主のご理解と施工会社の仕事への真摯な姿勢の賜物です。

完成まで残すところあと二ヶ月。
工事に携わる皆様、よろしくお願いいたします。 




nobu 

早いもので竣工して1年が経ちました。
建設会社の担当者を交えての点検です。

建築主さんには予め気になる箇所や不備事項をリストアップしてもらいました。
リストを含めそれ以外の部分について、内部から外部へぐるりと見て回りました。
施主の揺るぎない想いで建物全体はモノトーンで仕上げてあります。
その仕上がりは今日も竣工当時と変わりなく美しい状態を保っていました。
特に大きな問題もなく、リストで指摘された箇所については、
早急に対応することで検査は終わりました。

この画像は、光の当たり具合でガラスにシール跡が浮き出るというので,
皆で探しているのですがどうもわかりません。
加工mage2

後日この画像が届きました。運良く写真におさまったようです。
確かにシール跡が浮き出ています(中央の四角形)。
ガラスに焼き付けられたのでしょうか?こんなことってあるんですね。

IMG_0737
中庭のモミジが色づき始めています。
紅葉も間近です。


nobu



IMG_1036

日本を代表する建築家竹山聖氏の自叙伝を含めたエッセイです。
氏は大学卒業とともに、就職という通常の過程を経ずに仲間と共に設計事務所を立ち上げました。
その名は「アモルフ」。規則性を持たない不定形という意味のようです。
生き方もその作品もその名の通りです。

通常のレールの上を走るのではなく自分たちの設計理念のもと、その設計活動に全てを賭け、未来への希望に漲っての門出だったと思います。 
開設当初は知人の紹介で設計しながら執筆活動で凌いでいたとあります。
その後バブル経済という転機が訪れました。不動産を扱うディベロッパーの仕事です。
 ディベロッパーの数字を追うだけの銭勘定の仕事にも関わらず、アモルフは常にそれまでに培った設計理念、建築に対する真摯な姿勢で臨み、そのことはやがて ディベロッパーからの信頼を勝ち取り次々と作品を世に送り出しました。そして、その都度新たな出会いがあり、それがまた次へのステップとなり、35歳という人生の節目の年(村上春樹著:プーサイド)から京大に招かれ教鞭をとりはじめ、アモルフの設計活動とともに現在に至ります。

追想で初めて公共建築に携わった時のことがありました。氏の母校の設計依頼にかつてない喜びと興奮を覚えたとあります。民間事業とは異なる営利を目的としない事業の設計は魅力的でこの上ない喜びを感じたと思います。私は地方のしがない設計士ですが今回初めてあるお寺の「書院・庫裡」の設計を設計競技の末、受注することができました。公共の仕事ではありませんが檀家さんをはじめ不特定多数の多勢の人達が集まり利用する施設の設計は、私にとってはかけがえのない貴重な経験であり気持ちの上でも充実した面持ちで現在取り組んでいます。

本の中で一貫して「人との出会い」を論じています。
恩師をはじめ、友人、知人、クライアント、異職種の人達、etc・・・。
数多くの出会いがあり、影響を受け、助けてもらい、それらが全て財産となり現在があることに感謝の気持ちが絶えません。
「出会いが人を造り、人生を変える。」そんな思いがあります。

  建築は別世界を作りあげる作業
  建築は夢を売る仕事

そんな氏の言葉を胸に、もう一踏ん張りしようと思います。



nobu

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