2021年04月
岐阜へ
※撮影許可を得ています
写真は岐阜県にある伊東豊雄氏設計の「ぎふメディアコスモス」です。
昨日、岐阜にて構造設計士との直接打ち合わせがあり、その折に構造設計士に紹介していただき帰り道に立ち寄りました。
僕はこれまでに伊東氏の建築は「せんだいメディアテーク」「多摩美術大学図書館」を見ています。
どちらも学生時代に観に行きました。もう10年以上前です。
その時の建築界は、アーティストの村上隆氏が提唱した「スーパーフラット」の概念を建築に応用した考え方が主流にあり、「森」のような均質的に見えつつも多様性の揺らぎがある空間づくりを、こぞってみんなが目指していた時代のような気がします。
せんだいメディアテークも多摩美図書館も、そのうねりのど真ん中につくられました。
どちらも「面白い空間」ではありましたが、概念が先行しすぎていて、また、鉄とガラスとコンクリートが機械的に見え、人が空間に当てはめられているような違和感を感じました。あまり居心地が良い肌感覚の空間ではありませんでした。あくまで個人的にですが。
そして今回の「ぎふメディアコスモス」を体感して感じたことは、
「森」の系譜にあると思いつつも、木材や布を積極的に取り入れた温もりある素材感や、曲線曲面で構成される柔らかさ、本棚や布の傘を中心としたスケール感と身体性、そして傘の模様やサイン計画に遊び心や装飾性を感じ、僕はとっても好みの建築でした。地元の学生たちや親子連れの人達が建築に包まれて居心地良さそうに過ごしていました。とても羨ましく、静岡にもあったらいいなと思いました。
この10数年の建築の変化も感じました。
この10年といえば、明らかに建築界が変わっていったきっかけがあります。東日本大震災です。
この建築を設計された伊東氏は、東日本大震災直後に復興プロジェクトとして建築家の山本理顕氏、隈研吾氏、妹島和世氏、内藤廣氏に呼びかけ「帰心(きしん)の会」を結成。被災地の人々と相談しながら、コミュニティの中心となる場所をつくる「みんなの家プロジェクト」を立ち上げられました。
あの大震災を機に、建築に携わる者たちは、本当の建築の姿を考え続けています。
僕らのような小さな町の小さな設計事務所の建築士も同じ。
信じる建築は、建築家や評論家が評価する概念先行の機械的で空っぽな空間ではないはずです。
その空間を必要としている人達の生活に根付き、人と自然と寄り添う、生きている空間であるはずです。
それは、その地域、その敷地、その家族、歴史、時代、
そして人と向き合い続けて、僕ら建築士は自分たちの信念と共にそれぞれに違った答えを出していきます。
まとまりのない文章となりましたが、久しぶりの遠出で有名建築家の建築にも触れて刺激された1日でした。
良介