その土地に建つ家が生まれ変わるという事…。
『加藤先生の家』は建替えの計画でした。
新しい家は、昔の家の配置やボリューム感を引き継いでいます。
材料も解体のときに所々取っておいて新しい家の一部になっています。
そこに元々ある人と人との繋がり、光の射し方、風の抜け、愛着など、設計をする上で大切にしなければならないことはたくさんあります。何十年と体感してきた建物が一瞬で壊され、まったく別のものに更新されていく様、とくにご老人の住宅でのそのような光景は見ていて辛いものがあります。
その一方、アクティビティをガラッと変えたいという願望も建築家にはあるように思います。
そして実際、私達は今それをやってしまっている。
アトリエの壁にモザイクアートを施すことで、町の人たちの反応が大きく変わろうとしています。壁には加藤先生の記憶をデザインしています。
工事をしていると道の前を通りがかる人の多くが声をかけてきてくれます。『楽しいね!』『町が明るくなる!』『夢があっていいねぇ』などなど、今のところは好意的な意見が多くて安心しています。
ある人は、『まさに加藤先生の家という感じです。』という感想をくれました。
そう、そこなんです。いくらこんなことをやっても、そこに住むお施主さんのキャラに合っていなかったり、建築家のエゴによって、その建物と向き合えなくては意味がないんです。
かっこいいディテールで収める事やコンセプトを隅々まで押し通した空間性はもちえろん大事だけど、もっと大事な何かが自分の中に芽生えつつあるのを感じます。
工事はまだまだ続きます。
ただ、今は、一枚一枚のタイルに祈りを込めて。
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